「働き方改革による時間外労働の上限規制(2024年問題)について」
■当事務所では2024年問題を含む働き方改革への取り組みを全力でサポートします!
国が推進する働き方改革により2018年6月に労働基準法が改正され、労働時間に関する制度の見直しとして、2019年4月(中小企業は2020年4月)から一部の業種を除いて時間外労働の上限規制が適用されることになりました。
このときに上限規制が5年間猶予となっていた建設業、自動車運転者の業務、医師などの業種は2024年3月31日を以てその猶予期間が終わり、4月からは業種ごとに上限規制が適用されることとなります。
この時間外労働の上限規制も含めて2024年問題と言われており、とりわけ運送業界では4月以降のドライバーの拘束時間や休息期間など、根本的な働き方についても大きな改正があるため、従来の業務体制などを大幅に見直す必要のある企業が多いのではないかと思います。
また、医師についても長時間労働による違法残業が常態化しており、働き方改革が始まって以降も労働基準監督署から医師に関する是正勧告を受けた公的病院も多数あるのが現状です。公的病院は自治体などが運営に関わるため、民間病院よりも法令順守の意識をより強く求められる性質があると思いますが、それでも改善が進んでいないところにこの問題の深刻さを感じます。
建設業や運送業、医師などはその特殊性も含め、昔ながらの働き方が特に根強いこともあって、労働環境や業務体制を変えられずにいる企業や病院が多いようです。加えて、改正された法律に則って見直すにあたり、実際のところ何をどう変えていけば良いかがわからないという声も少なくありません。
そういった実情も踏まえて、当事務所では働き方改革への対応に悩む企業を全力でサポートし、使用者と労働者の双方にとってより良い体制を構築していけるよう日々取り組んでいます。
2024年問題に限らず、労務管理を行なう上でお困りごとがある際にはお気軽にお問い合わせください。
以下は2024年4月から適用される改正内容をまとめたものです。
■建設業
時間外労働の上限規制
【改正前】
●法律による時間外労働の上限規制なし(罰則なし)
●特別条項付きの36協定を締結・届出している場合、実質的に上限無く時間外労働を行なわせることが可能
【改正後】
●36協定を締結・届出している場合、月45時間以内、年360時間以内
●特別条項付きの36協定を締結・届出している場合、
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、2~6か月平均80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
■自動車運転者の業務
時間外労働の上限規制
【改正前】
●法律による時間外労働の上限規制なし(罰則なし)
●特別条項付きの36協定を締結・届出している場合、実質的に上限無く時間外労働を行なわせることが可能
【改正後】
●36協定を締結・届出している場合、月45時間以内、年360時間以内
●特別条項付きの36協定を締結・届出している場合、
・時間外労働が年960時間以内
◆時間外労働と休日労働の合計時間について、月100時間未満及び2~6か月平均80時間以内とする規制、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までとする規制は適用されません。
1か月の拘束時間
【改正前】
●1か月について293時間を超えないものとする
●労使協定があるときは、1年間の総拘束時間が3,516時間を超えない範囲内において、年6か月までは1か月の拘束時間を320時間まで延長することができる
【改正後】
《原則》
●1年間の総拘束時間が3,300時間かつ、1か月の拘束時間が284時間を超えないものとする
《例外》
●労使協定があるときは、1年間の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、年6か月までは1か月の拘束時間を310時間まで延長することができる
●この場合において、1か月の拘束時間が284時間を超える月が、3か月を超えて連続しないものとし、月の時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満となるよう努めるものとする
1日の拘束時間
【改正前】
●1日(始業時刻から起算して24時間)についての拘束時間は13時間を超えないものとし、当該拘束時間を延長する場合であっても、1日についての拘束時間の限度(最大拘束時間)は16時間とする
●この場合において、1日ついての拘束時間が15時間を超えることができる回数は、1週間で2回以内とする
【改正後】
《原則》
●1日についての拘束時間は13時間を超えないものとし、当該拘束時間を延長する場合であっても、1日についての拘束時間の限度は15時間とする
《例外》
●ただし、自動車運転者の1週間における運行がすべて長距離貨物運送(※1)であり、かつ、一の運行(※2)における休息期間が住所地以外の場所である場合、当該1週間について2回に限り最大拘束時間を16時間とすることができる
●この場合において、1日についての拘束時間が14時間を超える回数(※3)をできるだけ少なくするよう努めるものとする
※1 一の運行の走行距離が450km以上の貨物運送をいう
※2 自動車運転者が所属する事業場を出発してから当該事業場に帰着するまでをいう
※3 通達において、「1週間について2回以内」を目安として示す
1日の休息期間
【改正前】
●勤務終了後、継続8時間以上の休息期間を与える
【改正後】
《原則》
●休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする
《例外》
●ただし、自動車運転者の1週間における運行がすべて長距離貨物運送であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所である場合、当該1週間について2回に限り、継続8時間以上とすることができる
●この場合において、一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えるものとする(※4)
※4 一の運行における休息期間のいずれかが9時間を下回る場合には、当該一の運行終了後、継続12時間以上の休息期間を与えるものとする
運転時間及び連続運転時間
【改正前】
〈運転時間〉
●2日を平均して1日あたり9時間、2週間を平均して1週間あたり44時間を超えないものとする
〈連続運転時間〉
●連続運転時間(1回が連続10分以上かつ、合計が30分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間)は、4時間を超えないものとする
【改正後】
〈運転時間〉
●改正前から変更なし
〈連続運転時間〉
《原則》
●連続運転時間(1回が概ね連続10分以上(※5)かつ、合計が30分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間)は、4時間を超えないものとし、当該運転の中断は、原則休憩とする
※5 通達において、「概ね連続10分以上」とは、例えば10分未満の運転の中断が3回以上連続しないこと等を示す
《例外》
●ただし、サービスエリア、パーキングエリア等に駐車または停車できないことにより、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合には、30分まで延長することができるものとする
■医師
時間外労働の上限規制
【改正前】
●法律による時間外労働の上限規制なし(罰則なし)
●特別条項付きの36協定を締結・届出している場合、実質的に上限無く時間外労働を行なわせることが可能
【改正後】
●36協定を締結・届出している場合、月45時間以内、年360時間以内
●特別条項付きの36協定を締結・届出している場合、
◎A水準
・時間外労働と休日労働の合計が年960時間以内、月100時間未満
◎連携B水準
・個々の医療機関の上限は時間外労働と休日労働の合計が年960時間以内、複数の医療機関での通算は年1,860時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
◎B水準/C水準
・時間外労働と休日労働の合計が年1,860時間以内、月100時間未満
※時間外労働と休日労働の合計時間について、2~6か月平均80時間以内とする規制及び、時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までとする規制は適用されません。
※月100時間未満の上限については、面接指導を受けることにより例外が認められる場合もあります。
★各水準について(B,C水準については事前の指定申請等が必要)
【A水準】
医療に従事する一般の医師に適用される水準。
【連携B水準】
自院での上限は年960時間だが、副業・兼業先での労働時間を通して上限を年1,860時間とする水準。医師の派遣を通じて、地域の医療提供体制の確保に必要な役割を担う医療機関が該当する。
【B水準】
救急病院や救急車の年間受入数1,000台以上の病院など、特に緊急性の高い医療を提供する医療機関や、地域医療確保のために必要な役割を果たす医療機関に設定される水準。
【C水準】
「集中的技能向上水準」とされ、短期間に集中的な症例を経験することが必要である医師のために設けられた水準。