労働組合対策、団体交渉

○一先ずご相談下さい。きっと、気持ちが軽くなると思います。(道内は直接相談も承っております)


 突然の組合結成通知書や団体交渉の申入書が送られてくると、今までに経験したことが無い経営者にとっては何のことやら、どう対処したらよいものやら判らず終いで団体交渉へ突入する場合も多々見うけられます。しかし、組合側はそんな事を気にせず自らの主張を訴えてきます。こんな時、まず経営者の方は冷静にどう対処すべきかを考え、労働組合や団体交渉、不当労働行為など基本を知っておく必要があります。例えば、各都道府県ごとに労働委員会のリーフレットがありますので、これを参考にすることもよいでしょう。しかし、労働組合側から早急に団体交渉の要求があった場合など、全く余裕が無い場合もあります。実際、団体交渉というものは労使間の統一的な取引関係のルール(債務的効力)を作るための話合いであり、そこには自らの主張のための積極的要素を含んでいるため当然に労使間の対立もあるわけです。
 当事務所はこうした団体交渉や労使間の紛争等に精通した専門家として、中立的視点に立って助言や指導、さらに、団体交渉にも交渉委員として経営者とともに参加しております。
 これからも良好な労使関係と健全な企業経営ために早期に解決できるように努めて参ります。

○労働組合の申入書が届いたら、まず、焦らず冷静に対応して下さい。そして、申入を受理することを念頭に入れて下記の事項を確認して下さい。


就業規則やその他の諸規程の作成しているか?
■団体交渉の申入の内容は経営的部分を除き、必ず就業規則等の内容に関る事柄が大半です。だから、経営者の方は、まずは、これらをキチンと作成しているか、法律の改正や業務関係に変更を伴ったときに都度変更の届出をしいてるかをチェックして下さい。つまり、一番最初の法律であり、交渉事の建前になり、後に決裂したような場合には労働委員会の救済の申立てや訴訟になった場合に大変重要視されるからです。
【労働契約書<就業規則<労働協約書<労働基準法など特別法(規範的効力)
※労働協約は就業規則に優先し、就業規則は労働契約に優先する。上位の範囲の中でそれぞれ下位をみてゆく。

雇用契約書・協定書や時間外の管理・有給休暇などの労務管理は適切に行なっているか?
■通常業務で管理すべき事項に対し適切な処理を行なっているかが問われる場合もあり、例えば、時間外手当の原始データの正確な把握や有給休暇の付与日数の管理など、日常管理していなければならない事柄に不備があったことにより、労働者へ不利益となる可能性もあります。

委託契約書、請負契約書に照らした場合、その業務に携わる人の使い方が、会社の従業員性があるか?
■時間管理、就労場所、指揮命令系統の所在は何処にあるか。つまり、契約は従業員性は無いが、実体が他の正規の従業員と遜色が無い使用の仕方をしていれば、会社の従業員と見なされ、会社の就業規則の適用を受けることになります。

そもそも、団体交渉を受ける会社側(経営者)に、違法性に対する認識はあるか?
■対労働者の使用に対する法律への認識が問題となってきます。大会社であれば、労働法関係については専属の部署があって、団体交渉もこういった担当者サイドでの交渉も行なわれますが、中小企業になりその規模も小さくなればなるほど、専属部署も無く労働法に対する知識も乏しくなります。つまり、経営者自らが不法行為を先導する場合もあるということです。

★★上記のいずれかに対し不備があったり違法性がある場合は、団体交渉の申入れ内容にその部分が関 っているかを判断して下さい。そして、関っていた場合はどのような交渉をすべきかを検討し先手を打つ努力が必要になると思います。また、関っていないからといって不備や違法性がある箇所をそのままにせず、後に団体交渉が過熱した場合に飛び火することも注意しながら慎重に収拾するように努めて下さい。

◎団体交渉にあたってのポイント
・団体交渉は会社の交渉できる場所か又は他の交渉場所選ぶ。労働組合の事務所は避けること。
・経営者側はその主張の内容に対し、答えられる者が交渉に応ずる(1人では対応しない)。「社長を出せ!」と威圧的態度で出てくる場合があり、屈することなく毅然とした態度で臨むこと。
 ※相手が余りにも恫喝的な態度を改めない場合は、当然、正規の交渉はできなくなるので、経営者側はそれ以上交渉(不誠実団体交渉)は不可能として退席できる。
・新たな要求については文書で貰うこと。また安易に約束をしない。
・相手の主張については、その主張についての裏を貰うこと。⇒ 疎明資料
・経営者側は組合側の要求については、後日の回答として即座に回答はしないこと。⇒ 署名押印も・労働組合側が要求した資料については提出する義務は無いが、後日、会社側に不法行為が無いか吟味する。
・根気強く団体交渉に応ずるが、交渉が行き詰まりとなった場合は決裂(デッドロック)となるが、会社側からも宣言は出来る。

◎不当労働行為とは(労働組合法第7条)
■団体交渉に入る前に必ず知っておいて下さい。労働組合法第7条は、使用者の下記の不当労働行為を禁止しています

【不利益取扱い】労働組合法第7条第1号
 労働者が ①労働組合員であること ②労働組合に加入しようとしたこと ③労働組合を結成しようとしたこと ④労働組合の正当な行為をしたことを理由に、その労働者を解雇し、その他不利益な取扱いをすること。
【黄犬契約】労働組合法第7条第1号
 労働者が ①労働組合に加入しないこと ②労働組合から脱退することを雇用条件とすること。
【団体交渉拒否】労働組合法第7条第2号
 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉することを、正当な理由が無いにもかかわらず拒否すること。(不誠実団体交渉も含む)
【支配・介入】労働組合法第7条第3号
 使用者が ①労働組合の結成 ②労働組合の運営を支配したり、これに介入したりすること。
【経費援助】労働組合法第7条第3号
 使用者が労働組合の運営のため、経理上の援助を与えること。
【報復的不利益取扱い】労働組合法第7条第4号
 労働者が ①不当労働行為救済の申立て、再審査の申立てをしたこと ②労働委員会が審査、調整を行なう場合に、証拠を提示し、又は発言したことを理由として、その労働者を解雇し、その他不利益な取扱いをすること。
 

◎労働組合の意義・機能
日本国憲法第25条の生存権の保障を基本的理念として、勤労をもって最低限度の生活の権利を保障しているわけで、そこには日本独自の法律である労働基準法であったり、また日本国憲法第28条の労働基本権があります。つまり、使用者に対し劣位にある労働者を使用者と対等の立場に立たせ、その経済的な地位の向上を目的とするものです。
組合の沿革として、1987年11月19日に同盟と中立労連が解散し、11月20日に全日本民間労働組合連 合会が発足しました。新産別も1988年10月に解散して合流し、総評は1989年11月解散しました。よって、労働4団体が一元化されたわけです。後に反共産主義と批判する共産党系   労組として全国労働組合総連合を、また社会党左派(革新系)労組として全国労働組合連絡協議会を結成させました。
組合の種類・特徴
【職能別組合】
 同一の職種の労働者が自らの技能に関る利益を擁護するため結成された組合で、広域で組織される。
【産業別組合】
 同一の産業に従事する労働者が加入し、大規模な横断的労組。
【一般組合】
 職種・産業を問わず、広域に亘って組織する。
【企業別組合】
 特定の企業に働く労働者を職種の別なく組織する。日本の組織労働者の9割が企業別組合に加入。
【地域一般労組・合同労組】
 一定の地域の中小企業の労働者を企業や職種に関りなく合同して組織化した組合。管理職ユニオンやパートユニオンがこれに該当する。

◎会社の権利(専決事項)
組合側には、労働三権(団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権))があります。では会社には経営三権(業務命令権・人事権・施設管理権)があり、組合側は会社経営に関する事項については介入が出来ず、これら経営三権については専決事項としておくべきで、労働組合との交渉義務はありません。よって、団体交渉の場合はこれらを交渉事項に含めないように注意して下さい。
【業務命令権】
 ●労働者には会社の指揮命令に従い、誠実に職務に専念する義務がある。(業務中の組合活動などの規制)
【人事権】
 ●配置転換・人事異動などは会社の絶対的権限ですが、これを交渉対象にしていまうことは今後の人事に関して、組合の同意が必要な自体となるため。
【施設管理権】
 ●会社は当然施設の管理については権利があります。しかし、協議書などにより事前許可がある場合には最小限の便宜的供与として例外があります。つまり、会社の許可がなく事務所や掲示板を利用させることは出来ないということです。

団体交渉の決裂または交渉が行き詰まった場合(労働委員会)
 あっせんの流れ 【経営者側】
  団体交渉⇒交渉が旨く進まない⇒労働委員会へ「あっせんの申入れ」⇒労使双方から事情聴取⇒取下げ・和解・打切り
 救済の申出の流れ【組合側】
  団体交渉及び団体交渉拒否⇒不当労働行為⇒労働委員会へ「救済の申出」⇒審査(調査・審問)
   ⇒和解・取下げ又は公益委員会議⇒地方裁判所へ通知し訴訟となる場合と命令 全部救済・一部救済・棄却並びに却下となる。
■命令に不服がある場合
 ◆申立人
  命令書の写しが交付されて日から15日以内に、中央労働委員会に再審査を申し立てることが出来る。また、命令のあったことの知った日から6ヶ月以内に、地方裁判所へ命令の取消の訴え(行政訴訟)を提起することができる。
 ◆被申立人 
  命令書の写しが交付されて日から15日以内に、中央労働委員会に再審査を申し立てることが出来る。また、この再審査の申立てをしないで、命令書の写しの交付の日から30日以内に、地方裁判所へ命令の取消の訴え(行政訴訟)を提起することができる。
 ◆命令の確定・不履行
   ① 定められた期間内に、中央労働委員会への再審査の申立て、地方裁判所への訴えの提起が無い場合は、労働委員会の命令は確定します。
   ② 使用者は、確定した命令を履行しなければならない。履行しない場合は、労働組合法により50万円以下の過料に処される。